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「いや~!!ミストレス、コレってこの前作ってた実験体?何もうこの高慢ちきでお高くとまってる猫耳!性格悪そうなツンデレっぽくてちょー可愛いー!」
きゃー!と言う奇怪な雄叫びを上げてラッドに抱きつくストレングス。
「なにもうこの綺麗なブロンド!ブルーアイ!あーん、鼻っ柱へし折って泣かせてやりたーいッ!」
目標が自分から逸れたのを見て、ミストレスはあからさまに安堵のため息を吐き出した。
ラッドがストレングスの腕の中でギギギと、錆びついた音のしそうなぎこちない動きでこちらを振り返る。
「…閣下」
助けを求めた自分から目を逸らす女主人にラッドは絶望した。
正義の味方達の殆どが畏れ嫌う、悪の女将軍にここまで忌避される怪人って、いったい何者なのか。
酸素を求めるようにラッドはぱくぱくと口を開閉した。
「では私は執務室へ…」
と、さっさと踵を返すミストレスに、ラッドが恨みがましい視線を送る。
「帰れると思ったら大間違いよォ!」
嬉々とした表情で、ラッドを片腕に抱いたまま、ストレングスがミストレスを振り返る。
その横顔を見つめて、ラッドは息を呑んだ。
(獲物を狩る野性の獣の目だ!)
「ミストレス?まさか、帰っちゃうなんて寂しいこと言わないよね?このアタシに基地中くまなく捜させておいて逃げたらどーなるか…わかってんのか?」
怖いくらいの無邪気な笑顔で告げられて、ミストレスはメデューサに睨まれたように固まった。
本能的な恐怖を感じ取ってか、足が動いてくれないのだ。
三十秒は黙りこんで、ゆっくりと口を開く。
「…どうなるっていうのかしら」
思いきって尋ねてみた次の瞬間には『訊くのではなかった』と後悔した。
「取り敢えず、この少年を婿に行けないような身体にして散々泣かせた後、ミストレスに××されましたって暗示をかけて戦隊ヒーローの元に送り返すでしょ。んでもって憤慨したヒーローが『責任を取れ!』って怒鳴り込んでくるでしょ。そうしたら醜聞に切れた頭領に投獄されて弱った処をアタシが攫って逃げて躾けちゃう!」
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