ある夏の暑い日のこと

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降り注ぐ日差しのなか、セミにも負けないほどの声を出し、白球を追いかける。 僕はその真ん中の小さな山の上に一人で立っていた。 汗が乾いても乾いても、まだ止まることはなく、 肌が焼けていくのを感じながら、 足が砕けそうになるほど踏み込んで、 腕はただ、小さな砲台になって球を投げ込む。 ダイヤモンドという輝きの上で、 真剣に、ただ白球にすべてを込める。 そんなみんなに囲まれながら、 恐らく僕はただ一人考えている。 「夏なんてなくなればいいのに」 罰当たりだなんて思う人は、 この練習のあと、 あと何球か投げたあと、 僕の、 僕と、あの娘の物語を聞いてほしい。
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