ある夏の暑い日のこと

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練習が終わったら決まっていつも向かう場所がある。 バスに揺られて自宅のある停車駅の一つ手前、 「市民病院前」 と書かれた停車駅。 ここに降りるということは、十中八九行き先は決まっている。 口の悪い看護師や、ぶっきらぼうな医者、無機質と薬の臭いが入り交じった嫌いな場所。 彼女はそこの12階、1203号室にいる。 その部屋の前に立ち、息を整えてからノックする。 「どうぞー」 中からゆっくりとした返事が聞こえ、軽くため息を漏らし安心する。 「どう?調子は?」 「んー、いつもどおりかなー。」 ベッドでうつ伏せになって雑誌を読んでいた彼女が、体を起こしこちらを向いた。 これが僕の恋人だ。 「そっか、なら良かった。」 「毎日ありがとー、今日も練習終わり?」 慣れた手つきで近くの椅子を持ってきて、彼女の近くに座る。 「そうだよ、マジ暑かった・・・。」 「そかそか、お疲れぇ。」
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