リーディンググラス

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 つい最近まで『少年』としか形容できない体付きをしていたのに、ここ最近は会うたびに背が伸びて大人びた印象に変わってきた。  スラリとした体は今日も隙なくスーツに包まれ、首元には私があげたワインレッドのネクタイ。  ボスの帰宅の警護をするために、ボスの仕事が終わるのを待っているのだろう。  見苦しくない程度に壁に背を預けた彼は、仕事の隙間の時間に書類を読み込んでいるようで、登場した私には目もくれない。  瀬戸灰人  ようやく最近高校生くらいの外見まで育ったけれど、実年齢はもっと上で21歳。  人事部秘書課課長、通称ボスの私設ボディーガードを務めている。  ……うわぁ  私と彼とは顔見知り以上、恋人未満、ノット友人の関係だ。  プライベートで一緒に出かけたこともあるし、お互いの連絡先も知っている。  でも、だからといって想い人とも言い切れないふんわりした関係。  そんな距離を、私はひとまず楽しんでいる。
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