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その手の意図に気付いた私は慌てて声を張り上げながら彼に走り寄った。
「お疲れさまです、夏子さん」
「ちょっと! 何で隠れるのよっ! 何で外しちゃうのよっ!!
というか、何で私がいることに気付いてるなら声をかけてこないのよぉぉぉおおおおおっ!!」
ガシッと書類を持った方の手を掴んで引き留めたら、彼はスッと私から視線をそらしてなおもメガネを外そうとした。
だから反対側の手も捕獲して彼の動きを封じてしまう。
「ほらっ! 答えなさいよっ!!」
「っっっ、夏子さん、近い……!!」
「うるさい!!
それよりもどうしてもっとメガネ姿を堪能させてくれないのっ!?」
互いに腕を曲げた状態でその腕を掴んで顔を突き合せているのだから、お互いの顔の位置はあと少し身を乗り出せばキスもできそうな距離にある。
灰人はそのことに顔を真っ赤にさせたけど、私はそんなことは気にならなかった。
今の私には灰人のメガネ姿を堪能することの方が重要であって、その他のことは些事なのである!
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