祭りの夜に

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 お日様が沈み、あたりが夕暮れに包まれた頃、屋根の先の玉が光り始めた。まるでお月様のような輝き。だけど数がやたらに多い。何十個と並んで怪しく光っていた。  そして、集まって来た人間の子供たちがあたしたちに襲いかかった。何人もが池のふちに座り、手に持った白い円盤であたしたちを追い回す。円盤の中に捕らえられた兄弟たちは空中へ引き揚げられ、二度と帰って来なかった。  あたしは逃げ回った。迫ってくる円盤の動きを見ながら、右に、そして左にかわす。正面から来たら、水底ぎりぎりまで潜って円盤の下をすり抜ける。水中からせり上がってくる円盤は体をぶつけてジャンプし、円の外に逃れた。  気が付くと、残っている兄弟姉妹は半分ほどになっていた。あたしは泳ぎながら人間の様子をうかがった。何人かの人間が白い円盤を持ってこちらを見下ろしている。次に誰を狙うか選んでいるようだった。  その時、目の端を何かがよぎった。赤くてひらひらと動くもの。何だろうと思って、向きを変えたあたしの目に入ったのは……。  池のそばに人間の女の子がしゃがみこんで、こちらをのぞき込んでいた。女の子は体にぐるりと巻いた青い服を広いベルトで留めている。大きくて四角い袖が胸びれのように左右に垂れ下がっていた。その袖で何かが動いている。  あたしは自分の目を疑った。袖で動いてしたのは、蝶々の羽のような形の尾びれをした真っ赤な金魚、まるで水の中を泳ぐように、胸びれを広げ、尾びれを揺らしながら優雅に揺蕩っていた。  あたしは言葉を失い、金魚を見上げる。その視線に気が付いたのだろう。蝶尾の金魚はこちらへ向きを変えた。 「あんた、何見てんのよ」 「あ、あの……」  考えが頭の中で渦を巻いた。 「お姐さんはいったい……」 「わたしは金魚。もっとも……」  お姐さんは上を見上げた。 「人間の浴衣を棲み処にしているけどね」  浴衣というのはこの四角い袖の服のことみたい。 「どうして……」 「わたしにもわからないわよ。前はあんたたちと同じように金魚すくいにいた。人間に追われて逃げ回っていたわ。右に左に方向を変えたり、跳び上がったりしてね。気が付いたらここに来ていたの。ずっと昔のことよ。それからはここで暮らしているわ」  お姐さんは尾びれをゆらりと揺らした
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