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柳井先生は三十代に見えなかった。若くて四十三くらいだと思っていた俺は、コウジといっしょに目をまるくした。それから、急に気になった。
「駄菓子屋なんてありましたっけ?」
問いかけに、先生はあっさりと言った。
「おばちゃんが何年か前に亡くなって、息子の代でスマイリーになったんだよ」
スマイリーは、全国展開のコンビニだ。そうか、行き場をなくしたじゃんけんおじさんはコンビニで買い物をするようになったのか。
なんだか、物寂しい気もした。
柳井先生はじゃんけんおじさんの話をいくつかしてくれた。工場が休みでおじさんがいない日は、おばちゃんが代わりにじゃんけんをして、勝った子には十円のヨーグルトをサービスしてくれていたこと。カードは買ってくれなかったこと。個数の多いガムを買ってもらって、みんなで分けたこと。ちなみに、駄菓子屋のおばちゃんの息子は、先生の同級生なのだと言う。
先生の思い出話に耳をかたむけているうちに、その日の活動時間は終わってしまった。
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