棚機津女

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とある村にとある風習がありました。 毎年夏の夜に天帝が現れ村の娘を一人嫁にしてしまうというものである。 嫁とされた娘は一人として村に帰ることはありません。けれど村人は皆恐れを抱いて誰も天帝に逆らうことはありませんでした。 この村に機織り(ハタオリ)が上手で働き者のとてもいつくしい娘がおりました。名前を織姫と言いました。 織姫の織物は村一番の評判で、今日も村人達の着物をせっせと作っています。 今年も夏が近づいたある日、村にどこからともなくお告げがありました。 「7月6日に機織り人の織姫を嫁に貰い受ける」 天帝からのお告げは村人達を悲しませました。 今年もまた村から娘が一人消えてしまう。機織り人がいなくなれば誰が機を織るというのでしょう。 織姫もまた悲しみました。 なぜ私なのだろうと、夏なんか来なければ、夏なんてなくなればいいのにとどれ程思ったことか。 織姫は悲しみのあまり機を織らなくなってしまいました。 そんなある日、織姫は隣村で牛飼いをしているというとても立派な若者と出逢いました。名前を彦星と言いました。 一目見たときからお互いに相手の事を愛おしく感じました。 彦星は隣村の事を話してくれました。家族の事や楽しい思い出、聞いているだけで微笑んでしまう。 今度は織姫が自らの運命を彦星に話します。天帝にお嫁に行かなければならないこと、村を去らなければならないこと、すると彦星は言いました。 「そんなに嫌なら嫁になんか行かなければいい、僕と一緒に逃げよう」 織姫は彦星と共に村から逃げ彦星の村へ行くことにしました。しかし織姫と彦星の村の間にはとても大きな天の川が流れており通ることが出来ません。 彦星は言いました。 「カササギが橋を架けてくれる」 しかしカササギが橋を架けるよりも先に7月6日がやって来てしまい、村に天帝が現れます。 「織姫はどこだ」 恐ろしい剣幕で村人に尋ね、怖じけた村人は彦星と共に逃げたことを教えてしまいました。 これに怒った天帝は直ぐ様後を追い、天の川の前にいた織姫と彦星を見付け彦星を天の川の向こうに吹き飛ばし天の川の前に笹の壁を造り、織姫をさらってしまいます。 こうして織姫と彦星は引き裂かれてしまいました。
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