棚機津女

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天帝は村人達の願いを聴き、なぜこんなにも村人達は織姫の事を想うのか分かりませんでした。 その疑問は日に日に大きくなり、来る日も来る日も天帝は織姫の事を考えました。 気になった天帝は居ても立っても居られず、織姫を機屋から出し問いました。 「お前はどうして村人達から愛されているのだ」 誰からも愛された事のない天帝には織姫が羨ましくてなりません。 「私は特別なことは何もしていません、ただ毎日機を織り、村人達の着物を拵(コシラ)えただけ」 物を与えれば人から愛されると思った天帝は村にもたらす災害を止め、枯れ果てた作物を復活させました。 村人達は大変喜び、その笑顔を見て天帝も嬉しくなりました。 次に機織り人が居なくてボロボロとなった村人達の着物を見て天帝は村人達の為に機を織るように織姫に再び命じました。 村人達の為ならと織姫は機織りを再開しました。 織姫の織った着物は忽(タチマ)ち村人達に渡され、村人達は喜びのあまりお祭りを始めました。 天帝もとても嬉しくなり、村人達の願いを次々叶えていきました。 次の年の夏が近づいたとある晩餐、天帝はとても悲しそうにしている織姫を見て尋ねました。 「どうしてそんなに悲しそうな顔をしているんだ。 お前の言った通り、物を与えたはずなのに、どうしてお前は俺を愛さない?」 織姫は答えます。 「あなたはとても良いお方になりました。けれども私には別の想い人がいるのです。そして彼は今病に陥っています。 どうか彼に会わせて下さい。」 織姫の切実な願いに、けれども天帝は受け入れられませんでした。彼に会わせれば織姫は二度と戻って来ないかも知れない。天帝は織姫と離れたくありませんでした。 織姫はわんわんと泣き、そんな織姫を天帝は見ていられませんでした。 そして気付きました。そうかこれが愛なのかと。 天帝は決心し織姫にある約束をさせました。これからも毎日村人達の為に機を織ること、彦星にもまた牛の世話をさせること、そうすれば村に帰し彦星と会っても良いと、ただし約束を破れば彦星の村へと通ずる天の川を冠水させるというもの。 そして織姫に秘薬を渡しました。 「これできっと病も良くなるはず」 織姫は約束を誓い、村へと帰されました。 7月7日、笹の壁は無くなり、毎年この日だけ架かるカササギの橋を渡って織姫と彦星は結ばれました。 おしまい
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