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「ねぇ、やっくん。起きて。朝だよー」
朝が弱い俺を、彼女は毎日一生懸命起こしてくれる。
毎朝思うのだが、本当に起こす気があるのなら、服を着てからにすればいいのに。
生まれたままの姿である彼女の脚の間に割り込むことなど、文字通り朝飯前。
「ちょっ……なんで毎朝こうなるの?」
「希美さんが俺を誘惑するから」
「してない!」
してるよ。
そういう欲求が人生でマックス期の俺に、恋人の体を愛でるなというほうが無理な話である。
男の朝の生理現象を理解しているくせに、朝っぱらからそんな格好を披露してるのは自分じゃないか。
「ダメ、遅刻しちゃう」
ほぼ毎日こうしているけれど、遅刻をしたことなんて一度もないのは彼女だって承知のはず。
「もう! バカ! むっつりエロ大王!」
上ずった声で抵抗するふうなことを言うが、彼女が本当にNGな時は全然違う言い方をするのを俺は知っている。
「むっつり? 心外だな。俺はいつでもがっつりエロいでしょ」
「開き直ったな。外ではクールに振る舞ってるくせに」
俺たちの朝は、いつもこんな調子で始まる。
お察しだとは思うが、ただのノロケである。
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