魂鎮

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一つ吸い。 一つ吐く。 呼気で感じる空気は冷たいが、邪気はない。 自分が先程数えながら歩を進めたことで清められたことを、彼女は意識していない。 ただ、吸い込む大気の中に混じる神気だけを、百々は感じていた。 深く体を折ること2回。 両の手を、ゆっくり打ち合わせる。 ぱぁん  ぱぁん 「神様。私は四屋敷百々です。次の『在巫女』となるものです。」 百々は、加賀姓を名乗らなかった。 あえて、四屋敷姓を名乗った。 そうすることで、四屋敷の次代としての最初の仕事に臨む覚悟を言葉にしたのだ。 今の百々の全力の言挙げ(ことあげ)。 もはや、香佑焔は制止することはない。 百々の後ろで、片膝をついて見守っている。 自分のことを語りながら、百々は『大おばあちゃんなら、これなるは四屋敷一子、在巫女としてのお役目をいただいている者です、って立派な口上を言っちゃうんだろうなー』と思った。 そのときの一子の凛々しさは、百々の目指す姿であり指針である。
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