魂鎮

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「今日は、大年神様のお力に感謝を捧げ、お返しするためにまいりました。まだまだ未熟ではありますが、精一杯お祈りしますので、お聞き届けください。」 17歳、在巫女として正式な修行もまだな百々の言葉。 一子と比べれば、まだ弱いものだろう。 しかし。 「たかまのはらに かむづまります」 目を閉じて詞(ことば)が紡ぎだされた瞬間。 朽ちかけた社の周囲の大気が、ふるり、と動いた。 「やほよろづの かみたちを かむつどへに つどへたまひ」 幼い頃から、曾祖母が唱えてきた祓い詞。 意味は一通り教わったが、曾祖母は百々に言い聞かせた。 「百々ちゃん。意味だけを考えながら唱えても、意味はないんですよ。それよりも、どうしたいのか、どうなってほしいのか、正しく考えながら唱えなさい。そして、お願いしなさい。」 だから、今の百々は、祓い詞を唱えながら、そこに潜む意味は意識しなかった。 繰り返し練習し、曾祖母の真似をし続け、目から文字として覚えるより耳から音として覚えた詞。
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