魂鎮

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沈黙の数秒。 百々が、最後の礼をした。 ゆっくりと目を開けて。 「ねえねえ!どうだった、香佑焔!私、全部言えたよ!」 くるりと振り返って興奮ぎみにまくし立てる百々に、先程までの鮮烈さはない。 まるで、初めてのおつかいに成功した子供の報告のようだ。 これが、四屋敷なのだ。 これが、彼女らの「普通」なのだ。 「ねえってば!・・・え、もしかして、何か失敗してた?」 顔を挙げこそすれ反応のない香佑焔に、百々の興奮が冷めていく。 「・・・なにゆえ大祓詞(おおはらえのことば)を選んだ。」 百々が唱えていたのは、神社でも唱えられる「大祓詞」。 ひふみ祓詞のように、一子から教わっている祓詞はいくつかあるが、ここでの祈りに長いこれを選んだのは何故か。 偶然なのか、それとも。 「え、だって、大年神様でしょ?新しい年を迎えるときに来られる神様だよね?」 香佑焔の問いに、きょとんとする百々。
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