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「下がろう!香佑焔(こうえん)!」
百々(もも)の言葉に、彼女を守るように前に出ていた香佑焔が、ざっと飛び退いた。
毛皮を思わせる白髪が、ふさりと揺れた。
2人の目の前にいる少女から噴き上げるどす黒いオーラは、炎のように揺らめきながら、百々と香佑焔を威嚇してくる。
「百々!あれは、おまえでは敵わぬぞ!」
そんなことは、言われるまでもなく分かっていた。
まだ17歳の百々は、いかに己が特別な血を受け継いでいようと、それを十分に生かすことも増強することも、いまだままならないのだ。
『大おばあちゃんみたいに出来るわけがない!』
それを承知していてもなお。
目の前の、正気を失っている少女を放っておくわけにはいかなかった。
「しぃちゃん!しっかりして!飲み込まれないで!」
百々は、ありったけの声を振り絞って、少女に叫んだ。
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