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しかし、それが少女に届くことはない。
何故ならば。
「あんたがいなければ」
「あんたが来なければ」
「あんたが現れなければ」
「あんたがあんたがあんたがあんたが」
自分と同じ年頃の少女の口から絶えず流れるのは、百々への怨嗟だ。
百々は、恨まれる覚えなどなかった。
彼女と仲良くしたかった。
百々の方こそ、何度彼女のことを羨ましいと思ったことやら。
妬まれなければならないものなど、自分は何一つもっていないと言うのに。
「聞くな、百々。飲まれるな。」
悲しくてーーー
切なくてーーー
理不尽でーーー
気がつけば、百々の心まで負の感情に包まれそうになっていたのだろう。
そんな彼女を、香佑焔が引き寄せた。
本来は実体がない身のはずなのに、それは百々が触れるといつも温かい。
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