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少し前から、こうなるんじゃないかという予感はしていたのだ。
いくら、百々がまだ17歳になったばかりの少女とはいえ。
それくらいの機微は感じ取れる。
「いい加減ムカつくのよ!毎日毎日赤の他人と暮らしてるなんて!!」
それは、晩夏の夕食時。
一人の少女が、自分の箸をテーブルに叩きつけるように置いて言い放った。
怒りで燃える目は、ひたりと百々を睨み付け。
ああ、やっと爆発したんだぁ、などと百々は呑気に思っていたが、一瞬静まり返った食卓が一気に騒がしくなったのは言うまでもない。
「なんてことを言うんだ!史生(しお)!」
眼鏡をかけた中年男性の叱責に、あー、しぃちゃん、お父さん怒らせちゃった、とさすがに当事者の百々は箸を置いた。
「あ、謝りなさいな、史生!お父さんにも百々ちゃんにも!」
青くなって慌ててるのは、どうやら史生と呼ばれた少女の母親だ。
長い髪を後ろでひとつに束ねている、スタイルがいいというより少し痩せすぎな女性だ。
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