祝福と呪い

29/32
前へ
/970ページ
次へ
「けがれあらむをば はらへたまへ きよめたまへと」 きっと後悔したんです、伊邪那岐命様もーー だって、お二人であれだけ神様たちをお作りになられたじゃありませんかーー さあ、伊邪那美命様、再び伊邪那岐命様の元にお戻りくださいーー 菊理媛神様が、お導きくださいますーー 菊理媛神様、どうか伊邪那美命様を、どうかーーどうかーー 「かしこみ かしこみ まをす」 百々の詞とともに、本殿の周囲に立ち込めていた刺々しい空気が和む。 染み入るような温かさが満ちる。 争わず、慈しみ合い、赦し合うことを、菊理媛神と呼ばれる力が成し遂げていく。 荒ぶる伊邪那美命の力が、次第に安らいで、生前夫と寄り添ったときの慈愛に満ちたものに変化していく。 それに呼応するかのように、もう一つの力が不意に本殿の中に出現した。 「伊邪那岐命様・・・迎えに来られたのですね。」 伊邪那美命でも菊理媛神でもない力だとすれば、それはあと一つしかない。 佐々多良神社が祀る三主祭神の最後の一人、伊邪那岐命。
/970ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11945人が本棚に入れています
本棚に追加