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一子と共に再び手を合わせて、詞を紡ぐ。
曾祖母の声をなぞるように、声に乗せるように。
これもまた修行、四屋敷の当主となるため。
遠くで救急車のサイレンの音が聞こえた。
それが徐々に近づいてくる。
その中で、一子と百々は大祓詞をひたすら捧げた。
その背後には、一子の式神と百々の護りを引き受けた香佑焔が、それぞれ膝をつく。
そこはもはや、人がいてよい場ではなかった。
東雲が史生を抱き上げて、駐車場に向かっていく気配に、百々は泣きたくなった。
史生が助かってよかったーーなのに、今はもうこんなに遠い
自分の身を案じてくれた東雲さえもーー遠い
それが四屋敷のさだめだとしたら、自分は何て遠いところにいこうとしているのだろうーー曾祖母はそれをどれほどの間一人で耐えているのだろうーー
祈りの詞の陰で、ひっそりと百々の閉じられた瞼から涙が一筋溢れた。
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