鬼女の理由

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その夜は、あまりに慌ただしく、自身の力もほとんど使い果たした状態で、百々は四屋敷の実家に連れ帰られた。 家に到着したとき、百々は心配して玄関先まで出てきた両親とろくに言葉を交わせなかった。 無理もない、百々は一日中佐々多良神社で働いたのだ。 しかも、朝早くから。 そこで史生ともめた。 もめたというより、正しくは一方的に史生に罵倒されたのだが、悪意に慣れていない百々はそれだけで困惑し疲弊した。 さらに、昼間失礼な態度をとってしまった東雲が、夕方下宿に戻ったら百々のことを待ち受けていて、夕食を下宿先で一緒にとった。 東雲に申し訳ないと思っていた百々にすれば、そこで少し救われたわけだが。 史生のことを相談していたときに、史生の行方不明の連絡が入ってきた。 そこからは、まさにジェットコースターに乗っているかのような状態だった。 下宿先を飛び出して、幸野原稲荷神社に行き、さらに佐々多良神社だろうと思い付いて、東雲に車を回してもらった。 その車内で、百々は史生に忍び寄った黒いもやのような力の正体に、おおよその見当をつけた。
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