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そして、佐々多良神社に到着してみれば、朝見た黒い力が史生の全身を包んでおり、しかもそれは伊邪那美命の荒魂の力だった。
あれが荒魂そのものだったら、おそらく史生は最初の接触で正気を失っていただろうし、百々とて香佑焔の助けがあっても一子が到着するまでもたなかっただろう。
ほんのわずか、史生が感じ呼び寄せたのは、荒魂の欠片ほど。
それでも、その力は百々にとっては脅威であったし、香佑焔はあやうく穢れに侵されるところだった。
百々の祓詞に乞われ、伊邪那岐命と伊邪那美命の仲を取り持つ菊理媛神の力が発現してくれたからよかったものの、そうでなければ百々は伊邪那美命の力を鎮められなかったかもしれない。
入浴もせず、ふらふらと自室に入ると、着替えもせずにベッドに飛び込む。
頭の中では、ずっと考えているのだ。
一子が到着して、もう一度二人で詞を捧げている間、救急車に乗って行ってしまった東雲と史生はどうしただろう。
史生は無事だったんだろうか。
佐多家には、どんな連絡が行ったんだろう。
香佑焔は、どうなったんだろう。
しかし、肉体の疲労が、それ以上の思考を許さなかった。
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