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「あの子は、これから化けますよ。あの子の成長に、あなたの善き導きと正しき加護をいただきたく、改めてよろしくお願い申し上げます。」
丁寧な言葉とともに頭を深く下げ、一子は自室に戻って庭側の障子戸を閉めた。
残された香佑焔は、しばらくの間愕然としたまま、社の前から動くことができなかった。
翌朝、百々は絶叫とともに跳ね起きた。
「うわあああああん!信じらんない!完全に遅刻だよう!!」
日曜日は朝から佐々多良神社に行かなければならないというのに、今は午前9時だった。
どれだけ爆睡していたのかと思うと、百々は頭をかきむしりたくなった。
バタバタと廊下を走ると、台所から母の七恵がひょいと顔を出した。
「百々ちゃん、おはよう。」
「お母さん!どうしようどうしようどうしよう!神社に遅刻しちゃった!誰か送ってくれるかなあ!!」
下宿先ならともかく、ここは実家。
昨夜、ぼんやりとだが、下宿ではなく自宅に帰ってきた記憶はある。
下宿ならば、自転車で佐々多良神社まで通えるが、区まで異なる実家でしかも自転車もない、百々はパニックを起こしていた。
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