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「落ち着きなさい、百々ちゃん。夕べのことがあるんですもの、おばあちゃんが連絡していないはずないでしょう?」
優しく諭す母の後ろの台所からは、いい匂いが漂ってくる。
食欲を刺激する匂いだ。
百々の口の中に、涎がたまる。
早く行かなければと焦る気持ちと、こらえきれない空腹感の間で、百々は目をあちこちに走らせながら、悶えた。
そんな愛娘に七恵は笑うと、百々を浴室に行かせた。
「夕べはお風呂に入っていなかったでしょう?温めておいたから、入ってらっしゃい。上がったら、ご飯をいただきましょうね。」
「う、はい、ありがと、お母さん。」
あくまでマイペースで優しい母に従い、百々は昨夜入らなかったので、朝風呂に浸かることにした。
服を脱ぎ、浴室に足を踏み入れて浴槽の蓋を開けてみると、湯が溢れそうなほど入っている。
もしかすると、百々のために朝から母が新たに風呂の水を入れ替えて沸かしたのかもしれない。
在巫女ではないが、百々の心の浮き沈みや疲れ具合を的確に感じ取ってくれる母の気遣いに、百々は感謝しながら湯船に身を沈めた。
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