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全身を洗い、湯にのんびり浸かれば、気分も解れてくる。
百々は最後に顎どころか口まで湯に沈め、昨夜の出来事を思い起こしていた。
あれから史生はどうなっただろう、無事だろうか。
史生に付き添っていった東雲は、今日は休みだろうか、それとも仕事だろうか。
幸野原稲荷神社での出来事のあとも、東雲は変わることなく百々に接してくれたが、今回はどうなのだろう。
癒されていく体とは反対に、心はすっきりしない。
風呂から上がった百々は、ダイニングテーブルの席についた。
百々に温かい状態で食べさせてやろうと、母が百々の入浴を終える時間を見計らって準備した料理の数々に、百々は目を輝かせた。
「い、いただきまーす!」
「おかわりもあるから、たくさん食べてね。」
シンプルな長ネギと豆腐の味噌汁を一口すすったら、もうダメだった。
百々は白米を口に放り込み、その甘味を堪能しながら脂ののった焼き鮭に箸を入れた。
「ああん、これでもたくさん悩んでるのに、料理が美味しいよう!」
悩んでいるのだ、本当に。
しかし、肉体の空腹は、百々の手も口も止めなかった。
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