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母の剥いてくれたリンゴを残さず食べると、ほぼ満腹だった。
腹八分目でいつもやめられない自分に、そのうち絶対ダイエットが必要になると思いつつ、百々は自宅の固定電話から下宿先にかけた。
下宿先の女主人の紀子は、百々の元気そうな声を聞いて喜んでくれた。
それはもう涙ぐんでいるのではないかというほどの声まで出して。
昨日、飛び出していった自分と東雲をどれだけ心配してくれたのかを思い知らされ、百々は何度も何度も謝った。
夕食までには帰ると約束して受話器を置くのと、玄関先で母が曾祖母を出迎える声がするのがほぼ同時だった。
「大おばあちゃん!」
スリッパの音をパタパタさせて走っていくと、ちょうど一子が履き物を脱いで上がり、持っていた巾着袋を同じく迎えに出ていたもう一人の女性の式神に渡しているところだった。
「まあまあ、百々ちゃん、さすが若さねえ。すっかり元気。」
それを言うなら、百々がへばっている間にありとあらゆる方面に手を打ち、史生の病院にまで行ってきた高齢の一子は、どれほどの体力の持ち主なのか。
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