魂鎮

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百々は、スマホの頼りない灯りで、小さな社を照らした。 何もない。 あまりにも、何も残されていない。 「ここのおうちの人が引っ越しとかするときに、ちゃんと持っていってくれたんならいいんだけど。」 「そうとは限らぬ。百々。ここから何か感じるか。」 「・・・・・・うん。」 そっと目を伏せて、集中する百々は、少しの間無言で、それからゆっくり頷いた。 ちりちりするこの感覚。 これは、学校で感じたものに近い。 「ここ、まだ神様の力がある。でも、こんなに荒れてきちんとお祀りしていないから、乱れているみたい。」 「荒魂(あらみたま)にはなっておられないがな。」 荒魂ーーー 神の力には、表と裏、穏やかなものと荒ぶるものとがある。 包み込むような優しい大いなる力が、和魂(にぎみたま)。 荒ぶる恐ろしい力が、荒魂。
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