- 桜、音鳴る 春の夕 -

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 加えて『あり得ない景色』から推測するに、時空移動もしている、と言わざるを得ない。  空間転移と、時空移動の両方。その『理由』は何なのだろうか?あの時、聞こえた女性の声。あの声の(ぬし)が関係しているのは、間違いない。  けれど。目が覚めた時、この場所には桜花達しかいなかった。そして、空間転移と時空移動した以上、問題なのは〝今が何年(いつ)なのか〟と言うことだ。  〝未来〟なのか〝過去〟なのか。大抵、物語の時空移動………『タイムスリップ』では〝過去〟に来るのがセオリーだが〝未来〟と言う可能性も否めない。  ふと、桜花は思い出した。あの時、聞こえた女性の言葉。あれは一体、どういう意味だったのだろうか?  彼女の言う〝あの人達〟とは誰のことなのか。〝悲劇へと流れる運命〟とは?そもそも、変えることが出来ないからこそ『運命』と言うのではないのか。  桜花自身、別に〝運命論者(フェイタリスト)〟と言うわけでもないが、『運命』は自分の手で変えられるとか・自分の手で掴んでこその『運命』だ、とか思っているわけではない。  『避けることの出来ない事象こそが運命』なのだ、と思っている。
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