- 桜花と椿季 二人の花姫 -

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 そうそう、うまく切り替えられる人間ばかりではないのが現状だ。相手への『想い』が強ければ強いほど・深ければ深いほど『痛手』は大きく・根強く残る。  そして。新しい恋に踏み出すことに、二の足を踏む。不安が残っているから………〝裏切られたら?〝・〝捨てられたら?〟と、そう考えてしまう。  一度傷付いたから。もう一度傷付いたら、今度は立ち直れないかも知れない、と。恋に対して臆病になってしまって、当然なのだ。  桜花は純情で一途だ。たった一人を愛したならば、その人だけに尽くす。  その大人びた雰囲気と、勝ち気で強気な性格から考えると、意外だと思われるけれど。誠心誠意、尽くすタイプだったから。  そして一途故に身持ちが固く、一途故に簡単には切り替えられない。何にしても、桜花の『失恋の傷痕』を癒すには、まだまだ時間が必要なのかも知れない。 -その頃の桜花と椿季-  剣道部員達が、自分の話で盛り上がってることさえ知らない桜花は、待っている椿季と話しながら手早く着替え、帰り支度をして部室を出た。
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