とんでもない上司

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「飛田くん、おまたせ」 目の前に熱々の湯飲み茶碗を置かれた飛田の目が、私に釘付けになっている。 いきなり私がブレザーを脱いだから。 助けてくれたお礼に、私がストリップを始めたとでも思ったのだろうか。 「あー、やっぱりちょっと痣になってる」 ブラウスのフレンチスリーブから覗く二の腕には、正志の指の形に赤い跡がついていた。 「え? あ、ホントだ」 立ち上がって私のそばに来た飛田がそっと私の二の腕を撫でた。 「あっ……」 艶めいた声が出てしまって、顔が熱くなる。 ガバッと抱き着いてきた飛田の身体も熱い。 意外にたくましい飛田にうっとりと身を預けた。 「係長。僕、入社した時から係長のこと、好きでした。もっと一人前になってから言うつもりだったけど、一緒に暮らして係長を守りたいから。僕の彼女になって下さい」 ママも係長ならいいって言ってくれました、という言葉は聞かなかったことにしよう。 誰にだって欠点の1つや2つある。 マザコンでもいいから、飛田が欲しいと思ってしまった。 「加絵って呼んで」 「え?! じゃあ……」 ゴクッと飛田が喉を鳴らした。 「私も飛田くんが好き。だから、あなたのものにして」 「そ、それは上司命令?」 「上司命令。逆らえないでしょ?」 「はい。し、寝室はどこですか?」 *** 肉食系の牛窪係長が新入社員の飛田を食ったらしいという噂は、瞬く間に社内に広まった。 広めたのは私なんだけどね。 これで飛田の見た目に惹かれた女子たちが諦めてくれれば万々歳だ。 「か、加絵」 「ん?」 飛田はまだ私の名を呼び捨てにするのに慣れないでいる。 そんなところも可愛い。 「その、いきなり同棲を始めちゃったわけだけど、僕としてはちゃんと責任を取りたいと思ってて」 いやいや、ちょっと待ってよ。 「僕と結婚して下さい!」 「バカー!!」 「ええっ!? なんで!?」
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