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ーー良い、天気ですね……。
ユキがホウキで掃除をしながら空を見上げると、雲ひとつない青空。自分の気分とはまるで違う。
「僕はーーミコト様の神使。ただ、それだけですから」
自分で言ってて悲しい気持ちになり、涙が頬をつたう。ふと背後に気配を感じ、ごしごし涙を袖でぬぐう。
「ごめんね……ユキ。私が悪かった」
「いいえ、謝らなくて良いんです。本当の、ことですから」
先ほどとは違い、いつも聞く声色のミコトに少し安堵する。
彼を困らせないよう、ユキはホウキの柄を強く握り泣かないよう努める。
「いいや、謝らせてくれ。私はウコマにーー」
「あら。お二人揃ってこんな所にいるのは珍しいですわね」
ミコトはずっと背を向けていたユキをくるりと回し、自分と視線を合わせたところで第三者が現れた。
「サクヤ……様……」
ーーいけません。ミコト様の奥方になるやも知れない方にこんな姿を見せてはっ。
慌てて彼から離れようと努力をするも、ちっとも動かない。それどころか彼の力は増すばかり。
「ねぇ、お願いだから逃げないで。ユキ」
そのままぎゅっとユキをかき抱き、腕の中に閉じ込める。
「彼女もいることだし、ハッキリさせたい。君に誤解されるのだけは嫌だから」
「ミコト様……何を」
目をぱちくりさせていると、ユキの頬に手を添えられ上向かせる。
「君が好きだよ」
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