僕の上司は神様です

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「ユキ、ユキ~~っ。どうしたの?急に黙りこくって……」 「いえ、昔のことを思い出していただけです」 そっかぁ、昔から可愛かったよねユキは。相変わらずのベタ褒めに適当に相づちを打っていると、ぐうっとお腹の音がミコトから聞こえる。 「ほらほら、この後の予定も詰まってますし朝餉(あさげ)の準備させてください」 「ちえっ、分かったよ」 ミコトはしぶしぶユキを離し、後ろで腕を組みながら居間へと歩き出す。 ようやく動けると胸を()で下ろし、木板の床の廊下からパタパタとユキは台所に向かう。 ーー思いの外、早くミコト様から逃げれて良かったです。 下手すると日がだいぶ高い位置に来るまで離してくれない時も多々ある。台所に到着すると、素早く調理を進める。 「ミコト様。お待たせしました」 「ううん、全然待ってないよ。ユキの手料理が食べれるなら私はーー」 「では、朝餉(あさげ)を食べつつ今日のご予定話します」 「この後、参拝者の願事を聞きに本殿に移動します。昼からは月に一度の神々の会議へのご参加です。終わり次第、参拝者の願事をできる限り叶える作業をしてもらいます」 「会議出るのめんどくさい。ずっとここに居る~~」 「そんなこと言わずに働いてください」 ミコトが焼き魚をもしゃもしゃ食べては不満をこぼす。 ーー全く、この神様は……。 内心ため息をついていると、玄関から物音が聞こえた。 「ごめんください」 「はいです」 ユキは食べていた白米を慌ててのみ込み、玄関へ急ぐ。この来訪者が今までの日常を壊すとは知らずにーー。
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