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相も変わらず
「ユキ~~ッ」
「ひゃいっ」
ユキはミコトに恋愛感情を抱いていると分かると、彼の呼び掛けだけでも過敏に反応するようになった。
「君さ、最近変だよ?熱でもある?」
「だ、大丈夫です、僕は元気ですっ」
視線を合わせてくる彼から目を反らし口早に答える。
ーーどうしてミコト様は、神出鬼没なんでしょうっ。
あれから、何度も諦めようとした。距離を取ろうとも。でも彼はユキの居場所が分かるかのように、どこにでも現れる。
ーーあぁ、もう……こんなことになったのも。
「ウコマさんが悪いんですよ」
「……ウコマ?」
常よりは一段と低い声に背筋が寒くなる。どうやら、思っていたことを口に出してしまったらしい。ぱっと手で口を押さえ、恐る恐るミコトの様子を窺う。
「ーーねぇ、ユキ。前彼と話していた時、泣いてた理由聞かせてくれる?」
「…………言えま、せん」
彼の有無を言わせない気迫にのまれそうになり、木目の床に視線を投じる。
「……どうしても?」
ミコトは壁にユキを追い詰め、互いの口が重なりそうなほど密着する。
「ユキは私の神使ーーでしょ?」
「だからといって、お伝えする義務はありません」
やはり自分は神使とーー部下としてしか見てもらえないのかと歯がゆく思う。
こぼれ落ちそうになる涙をぐっと堪え、きっと睨みつける。鳥居の掃除してきますと言い置き、ミコトの腕から抜け出した。
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