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ザイードは愛美のその手を退けてまた、唇を重ねる。
「用はない──早く行け」
「はいっ…」
威圧的な声音に慌てた返事が返ってくる。走り去る音が聞こえるとザイードは膝に抱いていた愛美をゆっくりと絨毯に押し倒した。
向かい合う愛美の肌に背中から右肩に流したザイードの黒髪がはらりと落ちる。
こんな目に合わされてからやっとまともに愛美はその顔を見ることができたような気がしていた…。
裸で抱かれ熱い肌を重ねる。
荒いこともされるが何気に優しくもある──
大人しく抱かれて居ればまずは殺されることはない…
逃げる方法はゆっくりと考えよう──
愛美は見つめてくる黒い瞳を見据え考える。
ザイードはそんな愛美の頬を撫でた。
「人間は疚しいことを企むと瞳孔が開く──…」
「──…!」
笑みを浮かべて囁いた言葉に愛美は目を見開いた。
「ああ、あと考えていたことを言い当てられても開くな」
「……っ…」
また愛美の目が見開いた。
「ああ、それに珍しい物を見つけた時も高揚して開く──」
「え──」
ザイードは疑問顔を返す愛美の顔を覗き込んだ。
「瞳孔なんていつでも開く──」
「──…っ…」
信じられないっ──
カマ掛けられたっ…
悔しげに唇を噛んだ愛美をザイードはさも楽しそうに笑う。
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