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「ん…」
なんだか瞼が重い──
心地好い気だるさとココナッツの甘ったるい香りに包まれている。
穏やかな音色の民謡曲。どこかで鳴り響くバグパイプにも似た高い音に意識が呼び寄せられていた。
眉頭に力を入れて瞼をおもむろに引っ張り上げると目の前にカラフルな布が現れる。
うつ伏せになった状態で、抱えていた丸太のような白く長いクッションの感触にうっとりして間を置くと、愛美はハッと目を覚ました。
「ここ、どこっ!?」
伏せていた身を起こして辺りを見回せば、まるでサーカスのテントのような屋根が目につく。隅々には何かの資料で見たような異国の装飾品が並んでいた──
そして愛美は自分の姿に目を見開いた。
「なんで裸っ!?」
驚きながらも首に何かがまとわりつくような違和感を覚える。
「なにこれ?──」
とても柔らかいスカーフのような赤い布が巻き付いている。その先を辿れば根深く埋め込まれた鉄の杭に結び付けられていた。
「首輪っ!?なんで!?」
そう喚いくと同時に入口に張られた布が捲れた。
「──……!」
「やっと目が醒めたか」
「なっ──」
細かい刺繍を施した布。そのカーテンの向こうから現れたのは長身の黒髪の男だ。
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