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緩やかなくせのある闇色の長い髪。それを後ろで無造作に束ね、裸の上半身と腰には織物の布を腰に巻いている。
頭には白いターバンが巻かれていた。
「気をやったままの猿を抱いてもつまらんからな…」
細めの弦楽器、ラバァナハッタと弓を手にしたまま男はそう言いながら近づいてくる。
先程の曲はこの男が奏でていたのだろうか。今ではぱたりと止んでいる。
膝を付くと男は麻のシーツで素肌を隠す愛美の顔を覗き込んだ。
褐色の肌。伸びた逞しい腕で身体を支え、愛美の上にゆっくりと覆い被さってくる。
「な、やめて…」
怯える愛美を見て、男はふと漆黒の瞳を緩めた。
あの男だ──
愛美は咄嗟にそう判断した。髪の色と同じ黒く艶やかな瞳、そして布で覆われていたあの輪郭のはっきりとした唇──
熱い太陽の真下で強引に愛美の唇を奪ったあの形そのものが瞳と同様に口角を緩めていた。
砂漠の国の血が通うにはさほど濃い彫りではない。混ざり気のある小麦色の肌はこの地でも珍しい方だ。
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