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暑い地域に似合わず程好く涼しげな美形顔。
だが愛美は恐怖に固まっていた。
相手は盗賊だ…
逆らえば確実に殺されるっ…
「ご、ごめんなさいっ…許してっ…」
何もしていないのに謝るって府に落ちない──
でも、ここは日本じゃない──
日本的な考えは一切通用しないんだからっ…
必死で考える愛美の肩を男は長い枕に押し倒した。
「なんの許しを乞うのか知らんが……お前は今から俺のペットだ」
「……ぺ…」
囁くいた男の言葉に目を見開く。何かを言い掛けた愛美の唇を男は指で遮った。
「ザイードだ…主人の名を先に覚えろ。それ以外お前が口にすることは許さん」
「──…なっ」
「しっ……」
ザイードの言葉に驚いた愛美の口を手の平で塞ぐと、ザイードは入口に目を向けた。
「ザイード様、お夕食を御持ちしました」
外からそう声が掛けられる。
「中に運べ」
愛美に覆い被さったまま、ザイードはそう返していた。
カーテンがゆっくり開くと数人の女達が銀の器を手にして現れた。
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