2章 捕縛の掟

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・ 弾かれた勢いで顔が横を向く。 「───…」 「質問に答えろとは言ったが余計な御託まで口にしろとは言ってない…」 「………」 「裸で干乾しにされたくなきゃ慎むんだな?わかったか?」 「……っ…」 冷たい瞳にゾクッとした。 叩かれた拍子で切れたのか口の中で少し血の味がする。 今の一発で愛美は一気に喪失感に蝕まれていた。 叩かれただけで良かったことにしよう… 胸を愛撫しはじめたザイードに怯えながら愛美は送られてくる痺れに唇を噛み締めた。 結んだ唇が強く震え出す。 怖いっ── 帰りたいっ── 来るんじゃなかった…っ 楽しい一人旅の筈がこんなことに出くわすなんて、誰が想像しただろうか… 異国に旅立った日本人が行方知れずになる。 たぶん日本国外では珍しいことではないのかも知れない… 「噂通りだな…」 ザイードは胸をまさぐりながらそう言葉を漏らした。 「吸い付くいい肌をしている」 引き締まった口からはあっと熱い溜め息が零れる。 「ううっ…」 「………」 滑らかな赤子のような肌に夢中になりかけていると喘ぎとは違う声が聞こえ、ザイードは顔を上げた。 「……泣くな」 涙を目尻から枕に溢す愛美の赤い頬にザイードはソッと手を当てた。 自分の叩いた痕が少しずつ熱を持ち始めている。
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