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腫れてきた愛美の頬に目を向けるとザイードは枕元に並んだ銀食器に手を入れた。
ザクッと無造作に何かを鷲掴む──
「──…冷っ…」
果物をふんだんに盛った器の底のクラッシャーの氷りを頬に急に押し当てられ、愛美は小さな悲鳴を上げていた。
冷たい感触に驚いたのはほんの一瞬だ。愛美の頬の熱とザイードの掌の熱さで小さな氷りは瞬く間に水に形を変えていく。
ザイードは目をキツく閉じたままの愛美の頬に舌を這わせた。
「やっ──…だ…」
ヌルリとした感触に声が漏れた。ザイードの舌は耳に流れて溝に溜まった雫を掬う様に撫でる。
「あっ…っ…」
愛美の肌はゾクゾクと甘く疼いていた。
頬から耳へ、そしてうなじへと滴る冷たい水滴を口に含み何度も熱い舌を滑らせる。その度に愛美の耳元で喉を潤すザイードの咽喉がゴクリと音を立てて動く。
ザイードは顔を背けたままの愛美の顎を掴んだ。
「お前も飲め──」
「……っ…」
叩かれた熱とは違う熱さを持ち始めた頬を両側から片手で挟んで開口されると、ザイードは高い位置から赤い果実の実を愛美の唇へ搾り落とした。
緊張と暑さ、恐怖で渇ききった喉がたちどろに潤んでいく……。
頬の痛みを忘れさせるように甘い果実の香りが愛美を包んでいた。
口から溢れ出す勢いで次々にザイードは果実を愛美の口に搾ると今度はそれを奪うように愛美の唇を塞いだ。
「──…っ!?…ん…っ」
またあの強引な舌が這う。あまりにも熱すぎて何も経験のない愛美にとっては対処の術のない激しい口付けが──
愛美の口腔に溢れた果汁を音を鳴らして貪るとザイードは伏せていた顔を上げた。
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