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ザイードは笑いが落ち着くと愛美の頬を両手で挟んだ。
「俺から逃げよう等とは思わんことだ──…俺には陽の神の加護がついている。神の光に当たれば怪しき者の影など直ぐに捕えられる──」
ザイードは威風溢れる瞳を愛美に向けた。
「お前も例外じゃない──俺に対して怪しき行為を行えば──…どうなるかは想像くらいしておけ…いいな」
愛美は自分を見据えるその表情に唾を飲んだ。
やっぱり怖いかも…
何かをしでかしても冗談でした──…では通らなさそう…。
どうしよう──
一生日本には帰れない…
下手したら生きてることさえ危うい状況だ…
足掻けば足掻くほど深みに嵌まる──
この男の蟻地獄からは逃れられない。
不安に包まれた愛美を見つめザイードは微笑む。
「泣くな──」
ザイードは涙を浮かべた愛美に囁く。
「これは神が与えた俺とお前のカダル(運命)だ──」
そう言ってザイードはまたゆっくりとした律動を繰り返していた……。
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