2章 捕縛の掟

28/28
792人が本棚に入れています
本棚に追加
/37ページ
・ ザイードは笑いが落ち着くと愛美の頬を両手で挟んだ。 「俺から逃げよう等とは思わんことだ──…俺には陽の神の加護がついている。神の光に当たれば怪しき者の影など直ぐに捕えられる──」 ザイードは威風溢れる瞳を愛美に向けた。 「お前も例外じゃない──俺に対して怪しき行為を行えば──…どうなるかは想像くらいしておけ…いいな」 愛美は自分を見据えるその表情に唾を飲んだ。 やっぱり怖いかも… 何かをしでかしても冗談でした──…では通らなさそう…。 どうしよう── 一生日本には帰れない… 下手したら生きてることさえ危うい状況だ… 足掻けば足掻くほど深みに嵌まる── この男の蟻地獄からは逃れられない。 不安に包まれた愛美を見つめザイードは微笑む。 「泣くな──」 ザイードは涙を浮かべた愛美に囁く。 「これは神が与えた俺とお前のカダル(運命)だ──」 そう言ってザイードはまたゆっくりとした律動を繰り返していた……。
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!