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手綱を操りながら興奮気味のラクダの動きを抑える。その男は愛美を眺めると回りの仲間に向けて声を張り上げた。
「おいっ!毛色の変わったメスがいるっ──網を掛けろっ」
「え!?」
ちょっ…
ちょっと──っ…嘘でしょ!?
男の声に近寄ってきた仲間の賊の手から蜘蛛の巣のような網縄が放たれた──
「ちょっ──っうそっやだたすけっ」
愛美に向けて投げられた網縄は縁についた重しの遠心力でグルグルと周囲を堅め、まるで袋詰めにされたように身体に巻き付いていく──
周りを見たらとうに縄の餌食になってしまった町民の姿が見える。
「そいつらは連れていけ──」
「きゃっ!?」
短い悲鳴を上げる愛美の腕を掴むと躰がグイッと上に引っ張られ、男の脇に担がれた──
馬より遥かに高いラクダの背に乗せられて顔を覗き込まれる。
真っ直ぐに見つめてくる黒曜石の輝きに愛美は思わず息を詰めていた──
物凄く力のある澄んだ眼差しだ。
心の準備が出来て居なかった愛美はその瞳に見つめられて激しく戸惑っていた。
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