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「美姫大丈夫?」
姫の部屋に行くと心配そうに駆け寄ってきた。
姫の気持ちがあたたかくて泣きそう。
少し上を見る。
姫と目が合わないように、涙が出ないように。
「姫、話があるの……」
「話?」
私たちはその場に腰をおろす。
「うん……」
私はうつむいた。
「私ね、お嫁に行く」
「え?美姫は智と結婚してるじゃない?」
「帝の」
「え?」
「だ、だから、帝の」
「どうしたの、美姫」
顔をのぞきこんでくる姫はビックリしてて、私の意図が飲み込めていないみたい。
顔をそらして、
「智、きっと私のこと捨てたんじゃないかな?」
と言った。
姫と目を合わせてなんて言えない。
声が震える。
「そんなはずはないでしょう?」
「ううん、きっとそうだと思う。
だから、私がね、姫の代わりに帝のところにいけばちょうどいいと思って。
私がいけば、姫と皇子はそりゃあ今まで通りとはいかないにしても離れなくてすむんじゃない?
ね、一石二鳥ってヤツ?わぁ、いい考えだ~、すご~い」
一石二鳥って四字熟語、この時代にはあるのかな?
なんてどうでもいいことを考えながら、口からすらすらと言葉が出てきた。
目の前に置かれたセリフみたいに、ウソで塗り固められた言葉を吐けば不思議。
ニッコリと笑顔までできる。
姫の顔だってしっかり見れる。
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