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彼の言うことはデタラメで、住居にはすぐは着かなかった。
その間、かおりはずっと「すぐ着くんじゃなかったの?」など文句を言ったが、彼は相変わらず「もうすぐ着く」と笑って返すだけだった。
そして、平和公園に程近い住宅街の一角、高級そうな高層マンションの前でバイクは止まった。
「ここ……?」
ひぇ~、家賃めっちゃ高そうだし!
「そだよ」
答えながらバイクを駐輪場に置く彼。
「独り暮らしじゃないの?」
かおりは目の前のマンションを見上げながら、ポツリと呟く。
長崎の方言を使わないからてっきりよその人間かと思っていたかおりは、そこはとても学生独りで住めるような建物ではなかったため、ぼんやりと訊く。
「いや、独りだけど?」
「はっ!? こんなデカいマンションに?」
「うん」
目を大きく見開き、彼を見るかおりに対し無表情で答えた。
「はぁ……」
難しい顔をして再度マンションを眺めるかおり。
「金持ちなんだ……」
その言葉に男は憮然とした態度でかおりを見る。
彼女はそれに気づかず、呆然とマンションを見ていた。
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