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「……さぁ」
男は冷めた口調で吐き捨てるように言う。
それがあまりにも冷たくて驚いたかおりは慌てて彼を見た。
彼は視線に気づきサッと表情を明るくしたが、かおりは見逃さなかった。
彼のとても冷たい目つきを。
今までの彼からはとても想像のつかない意外な一面を見て動揺するかおり。
そんなかおりの心境を素早く察した男は、彼女の頭にポンっと手を置いた。
「ちょっと待っててくれる?」
またいつものような笑顔で有無を言わせない。
かおりは小さく頷いた。
すると、今度は駐車場へ向かう彼。
かおりがきょとんとして見ていると、彼は一番手前にあった黒のセダンタイプのBMWに乗り込んだ。
日本仕様になっていて右ハンドルのようだ。
はっ!?
イミがわからないんですが……。
そして、車はかおりの前に止まった。
かおりが呆然としていると助手席の窓が開き、ニッコリと笑う彼が顔を覗かせる。
「乗ってよ」
また有無を言わせない笑みを浮かべている彼に、かおりは戸惑いながらも乗り込んだ。
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