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七月上旬。
梅雨明け間もない長崎市だったが、すでに真夏のような日差しが降り注いでいる。
うっわ!
あっつーーー!!
原口かおりは大学の校舎から出た途端、あまりの暑さに顔をしかめた。
今日は午前中の授業しか選択しておらず、そのあとは図書館で課題をこなしていたが、キリもよくなり切り上げた。
日陰から日なたに出た途端、もう昼下がりだというのにジリジリと焦がすような日光が肌を刺し、慌ててかおりは日傘を差す。
十八年間生まれ育った地元を発ち、ここ長崎にやってきてから一年以上が過ぎた。
彼女の通うK女子大学は東山手と呼ばれる地区にある。
この地区は、江戸時代開国に伴い最初に許可された外国人居留地である。
教会やミッションスクール、中国建築様式を取り入れた洋館などはその当時の長崎を思い起こさせる。
当時、西洋人全般をみな“オランダさん”と呼んでおり、居留地にある坂はすべてオランダ坂と呼ばれていたようだ。
現在は彼女の通う大学に面した坂と他二つを総称してオランダ坂と呼んでいる。
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