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その日、依田は仕事を終えてある場所へ向かった。
何かを決意した様な、悲壮感さえ漂う真剣な表情で、足早にある建物の中に入って行ったのだ。
その眼は、覚悟を決めた男のそれだった。何か大切なものを失うかもしれない、だがそれでも行かなければならない。やらなければいけない。やるしかないんだ。
3時間後。
財布の中身を全て寄付し、依田は呆然とした顔でパチンコ店の自動扉を開けた。
依田の足取りは覚束ないが、唐突にスマホを取り出し、どこかへ電話をかけた。ボソボソと何かを呟いている。
「……30分コースで12000円って高いでしょ、せめて10000……いや9000位が相場だよ?オプションとかいらないから、ただ抜くだけでいいから、もうちょい安くならないの?」
果たして依田は電話を切ると、先程とは異なりしっかりした、どこかウキウキした足取りで銀行へ向かい、夜の町へ消えた。彼がどこへ行ったのかは全くの不明である。
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