3/3
前へ
/18ページ
次へ
こらえきれない動物の息づかいが保健室の天井に満ちて、体中が心臓に化けたように、心臓同士が繋がる先を探すかのように、グロテスクな時間に吸い込まれて収斂していく。 噛んでいたジャージはシミをつくって、保健室の窓からセミの鳴き声が飛び込んできた。 窓から入ってきた風が体を撫ぜた時、一之瀬くんは汗をぬぐって自分の本来ある世界へと手を伸ばした。 「……じゃ」 低い声とともに保健室のドアが閉まって、私はようやく2人分の汗で重くなったジャージを整え、布団の中にもぐりこんだ。 体内を荒らした熱は静かに静かに地に堕ちて、再び頭痛が蘇ってくる。 セミの鳴き声が響いて、太陽の光がぎらぎらとすべてを陽のもとにさらさんと狙っている。 暑くて溺れてしまいそうな、熱の交歓。 このまま眠りを貪りたい。彼が残した熾き火を鎮めてしまいたかった。
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

15人が本棚に入れています
本棚に追加