私の都合

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泣いてもしょうがないってわかってても、止められなかった。 1年も経ってるのに、涙なんて出るとは思わなかった。 ー気に入らないなら私が履く! ー気に入らないなんて言ってないでしょ。ただ、個性的な柄だね、って言っただけで ーじゃ、この子たち、レギュラーにする? ーん~、今のメンバーが引退すれば、ね? ーいつ? ーそうねぇ、あと30年くらい? ー30年も?!? ーそん時は一緒に新旧交代のセレモニーでもしますか ーえ?そんなことするの?? ーばーか。引っ掛かるのそこじゃねぇわ! ーえ?? ー言わすな、オレに ーあ!そういう意味?ねぇそういう意味? ーばーか ー耳赤ーい ーうるせ 鮮明に思い出せるあのシーン。 明確な言葉ではなかったけれど、唯一和也から言われた“将来”を匂わせるその言葉。 でも、そういう意味と気付くのが遅かった私は相当な鈍感だ。 『好きな人がいる』と聞かされるまで和也の気持ちに全く気付かずにいたくらいだから。 好きな人とはどうなったのよ。 何で今その靴下を履いてるのよ。 新旧交代のセレモニーは? その人としたの? どうして、今夜ここに来たのよ。 私の誕生日だって覚えてるの?
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