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「あいつが好きなんだよな?」
「う、ん……っ……」
「懐かしさだけであいつんとこに戻るんだとしたら許さないからな?」
「うん……」
「ははっ……こういう時に素直になるんだからな、ったくさ」
「ごめん………」
翔はもう一度“あははっ”と高笑いして、私の両肩を抱える力をきゅっと強めた。
「あいつは?」
「外……に…」
「…待ってるのか?」
「うん」
「そっか…。靴、脱がなくて正解だな。部屋に上がってたら……俺、かえせなくなってたろうな」
私を見下ろす翔は、今まで見てきた顔と違って見えた。
どうして私はこの人と別れるんだろう。
どうしてこの人を悲しませているんだろう。
どうしてこの人じゃないんだろう。
こんなに苦しいなら、ここに留まればいい?
「早く行かないと」
「う、ん……」
「待ってんだろ?」
「うん」
そうだ。
待ってるんだ。
和也が私を待ってるんだ。
もう離さないんだって、
そう、決めたんだ。
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