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お互いフリーの身で出会っている訳だから後ろめたさも何も感じることはないんだろう。
けれど、私の気持ちを重んじてくれた翔は、
“交際を内密にしとくってのもスリルあっていいかもな。オフィスラブ的な?”
そう笑って快諾してくれてそのことには一切触れずに今日まできたのに、
今夜はやけに食い下がる。
「言おうよ、ね?」
頭上からの翔の声が、甘くない、どこかピリピリとしたモノに聞こえて、
翔が何かを決心していると私でも理解出来る。
あまり良くない空気に耐えられず、
着ているカウチンに顔を埋め、広くて頼もしい背中にまわした腕に力を込めた。
汗と香水と煙草の香りが混ざった翔のニオイに落ち着くようになったのは、いつからだろう。
「言う」
「うん、その方がいいし、俺も他人行儀に振る舞わずにいられていい」
「そっか」
「うん。それに、他の野郎の視線が気になって気になって」
「へ?」
「こう見えて独占欲強いから、俺」
「あ、そう?」
「めちゃめちゃ妬くよ」
「何、その宣言」
「こんな、トイレの前で言うのもあれだけど、俺、お前を誰にも渡したくないんだよ」
「ちょ、翔…ふふ」
「笑うところじゃないから」
「ほーい」
「そういう、照れて誤魔化すところ、可愛いと思うし、好きだよ」
「……ちょっと、」
「玲乃は?俺のこと、好き?」
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