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丁度いい駐車スペースがなくて、少し離れたコンビニへとタクシーを移動してもらった。
“まだですかぁ?コッチにも都合があんですよねぇ”と不機嫌そうな運転手に、
「メーターそのままなんだから良いだろうが!」
そう毒づいてしまい、言い過ぎをちょい反省してホットコーヒーをおごり、玲乃が戻って来るのを待っていた。
10分を過ぎても一向に姿を見せず焦り始めたその時、憔悴しきった表情の玲乃がコンビニの灯りに照らされた。
「玲乃っ!」
オレの声に反応して、ようやく焦点が定まったように前を見ると、オレの居る場所へと駆け出した。
夜も更けたコンビニの駐車場で、
ドラマさながらに駆け寄る女をヒシっと抱き締めてんのは、
遠巻きに見ている店員に、少し顔を綻ばせて缶コーヒーを飲む運転手に、手を繋ぎ店から出てきたカップルに、
どう映って見えてんだろうか。
「和也っ……」
「………」
「く、苦しいよ」
「うるさい」
それぞれがそれぞれに何かを思いながらオレらを見てんだろうな。
今付き合っている人や奥さんや旦那さんや、過去の恋を思い出し、
それをオレらに重ね合わせて見てんだろう。
オレらには、
傷つけてしまった人がいて、
傷ついてしまった人がいる。
その上に立ち、
それを糧にして、
永い恋をようやく実らせたんだよ。
だから、
「ちょっと……ここ、外だし…」
「いいんだよ」
いいんだ。
ここに来るまでの道程は最短のルートじゃなかったかもしれないけれど、こうやってちゃんと辿り着けたんだから。
オレと玲乃のやり方で、さ。
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