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「おい、玉木。ちょっとこっち来い」
「あ、田上先輩。何ですか?」
その声は、同じ部署の田上先輩で、打ち合わせに使う会議室から顔を出し、手招きしていた。
「いーから!!」
「はい! ……あ、村中部長、先輩に呼ばれてるんで、これで」
「そうかね、じゃあまた」
「はーい」
またとか、なくていいから……。
頭の中でそう思いながら、村中部長から無事に逃れた俺は、会議室へ入った。
「なー、玉木。お前も大変やな!」
部屋に入った瞬間、田上先輩が俺の方へ腕を回し、ニヤニヤ顔で言う。
元々関西出身の田上先輩は、二年前に移動になり、東京へ単身赴任で来ていた。
関西人でも標準語になる人と、ならない人がいて、田上先輩は後者の方で、社内でもバリバリの関西弁で喋っていた。
「はぁ……なんの事ですか?」
「自分、またペローン部長にペローンされとったやん! 玉木くぅん! 今日もいいカラダしてるねぇ! ペローンっつって!」
田上先輩は、茶化し気味に喋って、村中部長の声真似をしながら、俺の身体をわざと撫でまわしてきた。
「ちょっと! 止めてくださいよ」
田上先輩が冗談でやってきてるのが分かって、俺も笑いながら撫でまわす手を払いのけた。
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